<孕ませ神殿>2 親子巫女 イリア&カヤーヌ・下

 

 

「お母さま、あたし怖い……」

塔に向かう廊下で、カヤーヌは身体を震わせた。

愛する男に抱かれる喜びと、破瓜への不安は矛盾しない。

私はその細い肩をそっと抱きしめた。

「大丈夫、あなたは、もう十分「大人」になれるわ。――イドリスもあなたを欲しがっている」

「……イドリスが……」

小刻みに震える娘の頭を優しく胸の谷間に抱え込む。

この子が不安になったときは、こうするといつも落ち着いたものだ。

「あなたも十分に熟れて、イドリスを迎え入れられる。――この五日間ずっと準備していたでしょう」

私は手を伸ばした。

カヤーヌの神官衣の裾を割って、下着の上から、股間をそっとなでる。

巫女見習いが初穂をあげるときには、初体験の男に施すように、先輩の巫女たちが<事前授業>を施す。

性に対するさまざまな知識は神殿に上がったときから与えられ続けているが、

直前の授業は、男を受け入れ、迎え入れるためのより実践的な施術だった。

カヤーヌのそれは、私が自ら担当した。

マッサージのような愛撫を繰り返し、若い身体の奥底に眠る女の肢体を目覚めさせる。

カヤーヌの身体は、この五日間で十分に目覚めていた。

あとは──精神だけだ。

私は、娘の股間を優しく嬲りながら、カヤーヌの耳元に唇を寄せてささやいた。

「――イドリスは、あなたを妻に迎えたいそうよ」

「!!」

カヤーヌの震えがぴたりと止まった。

女の覚悟は、時としてかくも簡単に決まる。

「あなたも、イドリスの妻になりたいのでしょう?」

「はい……」

「そう。では、行きましょうか。――大丈夫、母さまが見ていてあげる。

あなたが、イドリスの妻になるところを。安心して、あの子のものになりなさいな」

「はい!」

カヤーヌは別人のように元気良く歩きはじめ、私はその後を続いた。

 

「では──これよりイドリス様の<成人の儀>を始めます。

お相手は、巫女見習いカヤーヌ。<介添人>は、私、副巫女長イリアがお勤めいたします。

<成人の儀>では、熟練の巫女が立会する場合がある。

通常、はじめての性交にのぞむ男の子には、熟練の巫女が相手をするものだが、

巫女の側も経験が浅い場合は、補助する女が必要だからだ。

──執政官の息子とアドレナのときは別だ。

あの二人は、<婚姻と出産の守護女神>が定めた本能だけで、立派に数十人の子供を作るような男女だ。

カヤーヌの<介添人>は、私がつとめる。

大きく頷いたイドリスと、身を硬くしたカヤーヌが、それぞれ決意に満ちた表情で、褥に入り込んだ。

「カヤーヌ……」

「イドリス……」

私の「息子」と娘は、しばらく見つめあい、それから唇を重ねた。

あとは──もう流れるままだった。

イドリスは慌てることなくカヤーヌの巫女衣を脱がし、愛しい女を生まれたままの姿にした。

私と違い、ほっそりとした体型の娘は、胸乳も尻も小さかったが、

イドリス少年は、それを壊れやすい宝物のように優しく扱った。

カヤーヌが小さくあえぐ。

首筋へのキス、鎖骨をなぞり、胸乳を軽く揉み、なめらかな腹や太ももをなでる。

──私が教えたとおりの愛撫。

舌を絡めてのキス。甘い睦言。

──私は教えなかったが、二人だけで探り当てた愛撫。

初々しい二人の戯れあいは、ひどく真剣だった。

「これ、こんなに大きいの……」

カヤーヌがイドリスの男根をはじめて手にしたと、戸惑ったように呟いた。

「――」

私が何か言い聞かせて落ち着けさせようとする前に、イドリスが優しくささやく。

「大丈夫、恐かったら、もう少ししてからにしよう」

「ううん、恐くはないわ。でももうちょっと、待ってね……」

娘は、未来の夫の先端を優しく握りながら目をつぶった。

手のひらに感じる感触が、やがてそれを自分の身体と心とになじんで来るのを本能で知っているからだ。

 

「あ……」

「……こう、かな?」

目を閉じたまま、カヤーヌは確かめるようにゆっくりとイドリスの男根を愛撫した。

その動きは、自然と上下運動に転じる。――男根に快感を与える動きへ。

男が女を喜ばすことに自分の喜びを見出すように、女も男を喜ばすことが好きなのだ。

イドリスの性器は、さらに硬く膨れ上がった。

距離をおいて見ているだけでも、びくびくと脈打っているのが分かる。

「う……うん……」

イドリスの小さなあえぎ声が、荒い息に変わり始めた頃、カヤーヌは目を開けて微笑んだ。

「大丈夫──なような気がする。来て、イドリス」

「あ、ああ!」

カヤーヌはイドリスの下で身体を広げた。

イドリスがカヤーヌの上に乗る。

二人は、私が教えたさまざまな愛撫――フェラチオやクンニリングスやシックスナインなど──

をすっ飛ばして、根源的な交わりに飛躍した。

押しとどめることのできない本能は、しかし二人の間では優しく、自然なものだった。

 

「夫」の男根を握って確かめている間に、「妻」の性器はいつの間にか潤い、

イドリスが濡れた肉を割って入ってきても、カヤーヌはそれをかなりすんなりと受け入れた。

私の「息子」は、それでも破瓜の痛みに眉をしかめた私の娘を気遣う。

少年はかたつむりのようにゆっくりと動き、時々止まって少女の反応を確かめた。

 

そんなイドリスの優しさに微笑み返しながら、「妻」は始めての体験にとまどう自分の身体を律した。

私「息子」は、そんな少女のけなげさにさらに興奮した。

自分の中におさめた「夫」の脈打つ律動に慣れ始めた私の娘は、その動きを強めるようにささやいた。

少年はうなずき、カヤーヌの上で大きく動き始めた。

 

二人の押し殺した声がだんだんと強くなり、高みをのぞみはじめ、

――<介添人>の私は、すっかり出番を失った。

 

「ああっ、カヤーヌ……僕はもう……」

「んっ……、イドリス、私ももう……」

若い夫婦は、お互いの最も敏感な場所をお互いに与え合っている。

カヤーヌの肉襞は、イドリスの男根を包み込んで粘膜でからみ取り、

イドリスの肉棒は、カヤーヌの処女地を硬い亀頭で蹂躙した。

技巧もなにもない若い牡と牝の性行為は、売春巫女の長の一人である私にとって、

はじめてみるような初々しさと神聖さに満ち溢れていた。

やがて──

「ああっ、カ、カヤーヌ。イくよ、君の中に僕の子種をっ……!」

「来て、イドリス。私の中に、あなたを頂戴!」

「おおっ、は、孕んで、カヤーヌ! 僕の子供を!!」

「ええっ、産むわ、イドリス、あなたの子供を!!」

二人は同時に叫び、絶頂に達した。

のけぞる少年が、少女の中に大量の精液を放つ。

妻は、注ぎ込まれた夫の子種を子壺の奥に大切に収め、自分の卵と結びつけた。

──この交わりは、女神に届いた。

巫女でなくてもわかるくらいに、それははっきりとしていた。

当人たちにも分かったのだろう。

汗にまみれた顔に微笑を浮かべながら互いを見つめた若夫婦の表情はすっかり「大人」のものだった。

私は、そっとソファから立ち上がった。

もうこの二人には<介添人>は必要ない。

──イドリスは、カヤーヌの男だ。カヤーヌがイドリスの女であると同じくらいに。

二人の、不純物をかけらも含まない交わりを見た私は、

娘の婿にひそかに欲情を抱いていたことが恥ずかしくなってしまった。

部屋を出ようと扉に手をかけた私の背に、カヤーヌの声がかけられた。

「待って、お母さま。――次はお母さまの番よ」

 

「カ、カヤーヌ?!」

私はうろたえた声を上げた。

カヤーヌはベッドから起き上がり、私に近づいた。

「知っているわ、お母さま。――お母さまも、イドリスと交わりたいんでしょう?」

「カ、カヤーヌ……」

「イドリスから聞いたわ。――私たち、この五日間、夜はずっと逢引していたの。

もちろん交わったのは今が最初だけど、神殿の裏の森で、夜通しいっしょに語らってたのよ。

お母さまが、イドリスのこと好きなのも、教えてもらったわ」

微笑んだ娘は、私よりもずっと成熟した女のように見えた。

「……色々、調べたんです。――カヤーヌの父親、あなたの最愛の人は、僕の大伯父でした。

もう亡くなられていましたが、最後まで、あなたのことが好きだったようです」

イドリスも立ち上がってこちらへ来た。

成人を迎えたその顔は、――あの人にそっくりだった。

「――それでね、イドリスと話し合って、巫女長様にも相談して、結論が出たの。

――私たち、お母さまを喜ばせてあげたいって」

「僕は、貴女の「息子」になりました。カヤーヌは、あなたの娘。

子が母親に幸せを与えたいのは、母親が子に幸せを与えたいと同じくらい当然のことでしょう」

「お母さまに、もう一度素敵な愛をあげたい。――イドリスと交わって、お母さま」

「もちろん、カヤーヌと一緒に。三人で親子の契りを強く結びましょう」

カヤーヌ、私の娘は、私の左手をそっと取った。

イドリス、私の息子は、私の右手をそっと取った。

そして二人は、私をベッドへと導いた。

 

私の教えた──いや、それ以上の滑らかさで私は神官衣を脱がされ、裸の身体に愛撫を受けた。

イドリスとカヤーヌの指と舌は、若々しく熱心な動きをみせ、熟れきった肉体を燃え上がらせた。

カヤーヌが私の女性器を激しく責め立てる間、イドリスは私の口に男根を含ませ、たっぷりと味あわせた。

イドリスがゆっくりじらすように私の肛門を舐め上げる間、

カヤーヌは自分の性器を私の顔に押し当て、若い蜜液を吸わせてくれた。

やがて、私が、売春神殿の副巫女長とは思えぬほどにとろけきったとき、

カヤーヌがイドリスを導きながらささやいた。

「さあ、お母さま、私たちから一番のプレゼントです。――もう一度お父さまと交わって、お父さまの子供を孕んで……」

 

「ひぃっ……あ…あああっ!!」

娘婿の男根は、堅く、熱く私の内部をえぐった。

私はつい今しがたカヤーヌが見せたような、処女の敏感さでそれを感じ取った。

「ふふふ、いいでしょ。お母さま。我慢しないでいっぱいイってもいいのよ」

優しく笑う娘は、私の初体験のときに<介添人>をつとめてくれた巫女――今の巫女長──に似ていた。

「う…くっ、だ、ダメっ……あなたの旦那様のでこんなに、こ、こんなに感じちゃ……」

「あら、ちがうわよ、お母さま。今、お母さまの中に入っているのは、イドリスのじゃないわ。

──お父さまのおち×ちんよ」

「そうです。これは、カヤーヌのお父さん、貴女の最愛の人のものです。

だって、ほら、こんなに熱くて脈打っているじゃないですか。

貴女の中にもう一度入りたくて十何年も待っていたから、こんなにカチカチなんですよ」

「あああっ」

二人の示し合わせたことばに、私は我を忘れた。

「さあ、お母さま。お父さまに、どうされたいの?」

「……な、中にっ……中に子種をくださいっ! 私にあなたの子供を産ませてくださいっ!!」

私は懇願した。

カヤーヌを孕んだ交わりの時のように。

さまざまな事情で結ばれることがなかった男との逢瀬の時のように。

「うふふ、いいわ。お母さま、お父さまの子種でイっちゃいなさい。

お父さまはお母さまのことを愛しているから、お母さまが望むだけ子種をくれるわ。

だから、お父さまの精をしっかり受け止めて、孕んであげて……」

「はいっ、孕みますっ、あ、あなたの子供っ……」

真っ白な頭にカヤーヌのささやき声が渦巻く中、

私は、カヤーヌの父親が大きくあえぎながら私の胎内に射精をするのを感じた。

カヤーヌを孕んだときのように、子種がたっぷりとつまった濃い精液が、私の子宮を満たしていく。

性交と射精は、あの日のように何度も、何度も繰り返され、

──私は、あの日のように、私の中に小さな生命が芽生えたのを感じ取った。

満たされた思いに包まれながら、私は手を伸ばし、最高の幸せをもういちど与えてくれた娘と息子をそっと胸に抱き寄せた。

左の乳房をカヤーヌに、右の乳房をイドリスに与える。

赤ん坊のように吸いたてる二人の子供に、今、お腹の中に宿った子を重ねあわせ微笑んだ私は、

ゆっくりと沈み込むようにして至福のまどろみの中へ落ちていった。

 

「うわ……すごい。妊婦用なのにとっても素敵なドレスね」

カヤーヌが、届いたばかりの花嫁衣裳を見て歓声をあげた。

豊かに盛り上がった腹をかかえた娘は、出産を待たずにイドリスに嫁ぐ。

「こういうデザインとかは、やっぱり帝都のほうが進んでいるよね。

今の執政官の息子さんの花嫁もこの仕立屋のドレス着て結婚式挙げたんだって話だよ」

「カヤーヌ、あんまりはしゃぐとお腹の子供に障るわよ」

私は、ドレスを胸に当てて今にも走り出しそうな勢いの娘をたしなめた。

「そうそう、妊婦さんは、大人しく座ってなきゃ。――お義母さんみたいに」

娘婿は、カヤーヌと同じくらい膨れた腹をしている私を指さした。

「だって、これから結婚式して、あなたの子供を産んで……って考えたら、幸せすぎてじっとしていられないもん」

膨れ顔になった若妻に、婿殿は苦笑いした。

「そんなにおっぱい大きくなったのに、カヤーヌはまだまだ子供だね」

妊娠してから急に大きくなった娘の胸乳は、今では私に迫る勢いだ。

血というのは争えないものだ、とつくづく思う。

「ひどいわ、イドリス。あなただって、まだまだ子供じゃない。

知ってるわよ。昨日の夜、お母さまにおっぱい吸わせてもらってたでしょ?」

「うっ」

「ふふふ、昨晩は<お父さま>もいらっしゃっていたわよ」

「あー、ひどーい。また二人だけでしてたの? 私も入れてよ」

イドリスは、私と寝るときはカヤーヌの父親になる。

カヤーヌは、それをとがめない。

母子三人で交わるときは、イドリスは二役をこなし、私たち親子を満たしてくれる。

その関係は、初めての日からすんなりと定まった。

これも、イドリスとその大伯父、私のカヤーヌにそれぞれつながっている血が為せる業かもしれない。

「……わかった、わかった。今晩、たっぷり、な?」

「――お腹の子供に負担かけないように、気をつけるのよ」

「はあい」

返事をしたカヤーヌは、私の顔を覗き込んでにっこりと笑った。

「うふふ、お母さまといっしょに子供を産めるなんて夢見たい。――ね、子育て、色々教えてね」

「もちろんよ、カヤーヌ。叔母と姪が同い年というのもちょっと大変だけど、仲良く育てていきましょう」

「うふふ、お父さまもきっとお喜びだわ」

──もうすぐ、この街の人口が二人ほど増える。

きっと姉妹のように仲のよい叔母と姪になるだろう。

 

 

 

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